講師1対生徒2の中でも、2人の生徒が同じ範囲を習うという、一番「洗練された」形態に絞って書いていきます。講師1対生徒1のマンツーマン指導との差を意識してご理解いただければと思います。
結論から申し上げると、文系教科はあまり変わらないこと「も」あると思います。2人の生徒の知識量に少々差があっても、文系教科の知識は比較的短時間で埋め合わせることができるからです。例えば、英語の「so~that構文」を知らない(忘れていた)生徒にそれを説明するのに10分もかからないでしょう。さらに、もとから知っているもう一人の生徒もその説明を聞いて損はありません。
しかし、理系教科は違います。例えば、片方の生徒が正弦定理を知らないとします。そのような生徒に、正弦定理の公式を説明しただけでは済みません。その証明もノートに書いて見せなくてはいけません。それから、その生徒が学校で使っている問題集の中から正弦定理の基本的な問題を探し、宿題として解くように指示する必要もあります。正弦定理がわかっていないとなると、余弦定理もわかっていない可能性があります。それを確かめた後、必要なら余弦定理についても説明し、宿題で解くべき問題を指示しなければいけません。その間、もう片方の生徒は待ちぼうけを食らいます。おおよそ20分ぐらいでしょうか。正弦定理は数Ⅰの三角比で登場します。仮に数Ⅱの三角関数で詰まった生徒がいたら、20分では済まないはずです。「さらにその前、さらにその前」と遡って説明を行わなければいけません。もう片方の生徒のことを考えてその説明をコンパクトにしすぎると、十分に理解してもらえず、また同じ範囲で同じことが起こります。片方の生徒が宿題をしっかりやってこない場合があります。それで2人の進度にズレが生じます。ここからは「洗練されていない」講師1対生徒2の形態に移行してしまいます。同時に同じ内容を習うことで得られた時間的メリットが失われます。90分の授業なら、45分の授業しか受けていないことと同じになります。それだけではありません。宿題をしっかりやってこない生徒はそれを繰り返します。時間を取って注意しなければいけません。それをもう片方の生徒が聞かされるという状況は避けなければいけません(しかし、授業後に時間を取って生徒に注意をする講師が世の中にどれだけいるでしょうか)。両方の生徒がまじめな場合でも、予習をさせているのであれば進度のズレは必ず生じます。「この問題はAさんだけが、この問題はBさんだけが間違える」といった状況は1回の授業で何度も起こります。そのたびに「洗練されていない」講師1対生徒2の形態に陥ってしまいます。
残念ながら世の中には、はじめから「洗練されていない」講師1対生徒2の形態を商品としている個別指導塾が主流です。そこでは例えば、片方の生徒には「二次関数」を、もう片方の生徒には「数列」を指導したりしています。教科自体が違うケースもあります。そこに通わせている保護者がお子さまに塾での様子を尋ねれば、「(それなりに)勉強できた」「よくわかった」という返事が返ってくるかもしれません。「本格的な」マンツーマン授業を受けたことのない子どもには、今受けている授業を評価する客観的な判断材料がないからです。今の状態を当たり前だと感じるのでしょう。成績が伸びないとお悩みの保護者や生徒は、まず現在の授業形態について見直した方がいいかもしれません。