数学の学習においては、まず問題集を一冊だけ選んで基礎を固めることが大切です。あれこれ手を出すのはおすすめしません。海星女子や甲陽学院なら「4ステップ」、六甲学院なら「体系問題集」です(学年によって使用する問題集が異なるケースがあります)。この段階では、解き方がわからなくてもそれほど長時間自力で考える必要はありません。わからなければ早い段階で解答を見てもいいと思います。
一冊目の問題集で基礎が固まったら、次は二冊目の問題集で標準レベル以上の問題にチャレンジします。いわゆる難問と呼ばれる問題が解けるようになるためには、難問を解いて訓練するしかありません。一冊目の問題集を繰り返し解いても難問が解けるようになることはありません。二冊目の問題集では、安易に解答を見てはいけません。思考力が身につかないからです。問題集によっては、5分間考えてわからなければ解答を見るようにと初めに書いているものもありますが、短すぎます。
二冊目の問題集が解けない原因は二つあります。一つ目は、思考力がないことです。このケースでは、思考力がつくように粘り強く自力で考え続けるしかありません。意外に多いのは二つ目です。そもそも一冊目の問題集での基礎固めが中途半端に終わっていることです。基礎固めの問題集は一冊で結構ですが、その一冊は完璧に仕上げなければいけません(厳密には8割以上の仕上げで結構です。これについてはまた別に書くつもりです)。
多くの学校では長期休暇に「青チャート」が出題されます。それに対して私は否定的です。主な理由は三つあります。
一つ目は、基礎固めが目的なら、生徒がそれまでに何度か解いている一冊目の問題集(「4ステップ」や「体系問題集」)が最適だからです。定期考査で点数が取れなかった生徒はそれを完璧には仕上げていなかったはずです。そんな生徒に「青チャート」を与えたところで、それも完璧には仕上げないでしょう。両方の問題集が中途半端な仕上がりになってしまいます。それよりも、定期考査前に何度か解いた一冊目の問題集にもう一度取りかかってもらった方が、仕上がりの濃度は高くなるはずです。入試は時間との戦いでもあります。限られた時間をいかに有効に活用するかを常に追求していかなければいけません(もちろん、私は遠回りを否定しません。遠回りが生徒の成長にとって有効な場合は多々あります)。「それでは定期考査で高得点を取った生徒はどうするのか」という質問が出てきそうですが、定期考査で80点以上を取った生徒には、そもそも基礎固めとしての「青チャート」は必要ないと思います。
二つ目の理由です。「青チャート」は、数学に必要な道具を体系的に示すことを目的に作られています。思考力を養う訓練のための問題集ではないと私は思います。実際、数学中級者以上からの、「青チャート」を解いていてもあまり楽しくないという声をしばしば耳にします。「頭を使って解いた」という感覚が得られないからだと思います。ですので、定期考査で高得点を取った生徒のための応用的問題集としても「青チャート」は不適切です。
それから三つ目です。長い期間数学を学習していると、調子が落ちることがあります。前に習ったことを忘れてしまうこともあります。そんなときに頼りになるのが、それまでに何度も解いてきた一冊目と二冊目の問題集です。長期休暇のときに何となく解いた「青チャート」がその役割を果たせるはずがありません。将来、それほど役に立たないことに少なくない時間を費やすのはもったいないはずです。
最後に。普段の授業で「青チャート」を使用している学校もあります。私が以前指導していた生徒の学校がそうでした。その学校が、一冊目の問題集として「青チャート」を長期休暇の課題として出すのは適切であると思います。ただし、定期考査上位者は除くという前提付きです。