結論から申し上げます。先取り学習の最大のデメリットは、「理解に対する基準が甘くなる」点だと私は考えます。もちろん全員ではありません。私の実感として、全体の6~7割はそうだと思います。
他塾を辞めて私の指導を受ける生徒が少なからずいます。他塾ではうまくいかなかった生徒です。最初に体験授業を受けてもらうのですが、すでに先取りで習った範囲から出題しても、ほとんど解けないというケースが多いです。理解が浅いのです。
しかし、これが最大の問題ではありません。それ以上に問題なのは、「わかっていないのに、すぐにわかったと思いこむ癖」がついていることです。(私)「学校で習った○○は大丈夫ですか?」、(生徒)「はい。大丈夫です」。この言葉を信じて指導を続け、それから2~3週間経ったある日、新しい問題を解いてもらったときに、肝心の○○について理解していないことが発覚します。しかも、そういう場合、その周辺の△△も、□□も理解できていないことがほとんです。もう一度、2~3週間前に戻って指導しなければいけません。もちろん、その間に扱った問題で、○○に関連する内容も最初からやり直しです。実際には、そういう「ヘマ」はほとんどしませんが(事前に確認したり、途中で気づいたりします)、「わかった」と思い込んでいる人間に「実はわかっていない」という事実をわかってもらうためにはかなりの時間を費やすことになります(入試本番までの時間は有限です)。その分、指導が進みません。本番までに間に合わない可能性が高まります。それが何度も起こります。本人はわかっているから大丈夫と思い、指導者は、いやわかっていないんだよ。だってね…の繰り返しです。指導していて頭がクラクラしてきます。
この問題は、それだけでは終わりません。授業外の学習にも影響を与えます。わかっていないのに、わかったと思い、中途半端な段階で復習を切り上げるのです(本人に悪気はありません)。授業時間は週にたったの2時間です。学力を伸ばすためには授業外での学習が重要です。それが毎回不十分だと、結果が出ないのは当然です。
これは真面目にやるとかやらないとかの問題ではありません。私が指導してきた生徒はほぼみんな一定以上の真面目さを備えていました。真面目にしていても、こうなってしまうのです(このことを理解できずにお子さまに強く当たられる保護者がいらっしゃいます。お子さまを傷つけ、モチベーションを下げるのでかえって逆効果です。厳しくするポイントはそこではありません)。その元凶のひとつが先取り学習です。理解の浅いままに先に進むことを繰り返すことで、理解に対する基準が甘くなっていくのです。そして、それが定着していきます。放置したまま、ただ数学の内容だけを教えてもほとんど成績は上がりません。改善するためには思った以上の労力がかかります。
先取りで学習しているはずなのに、定期テストで何度も平均を下回る、進研模試などで偏差値65を超えないなど、保護者からご覧になって、お子さまが極端な先取り学習に向いていないと感じられることがあったら、一度立ち止まって今後の対応を考えられた方がいいと思います。私も原則、先取り学習を推奨しています。しかし、その進度は生徒ひとり一人によって変えています。消化不良にならないように常に目を光らせ、カリキュラムに縛られ過ぎないようにしています。