先取り学習を売りにする塾や予備校は多いと思います。そのメリットとデメリットは、ネットを検索すればたくさん出てきます。わかりやすさのために箇条書きにしてみます。

◆メリット

・受験に必要な内容を早く終わらせることで、さらなるレベルアップのための学習、過去問対策、弱点補強を余裕を持って行える。→これが最大のメリットであると思います。私が担当している一部の生徒の学校では、高3の6月時点でまだ数学がすべては終わっていません(中高一貫の進学校です)。塾なしの生徒の場合、ほぼ教科書と4ステップでしか勉強していません。11月半ばあたりから共通テスト対策を行うと仮定すると、約6ヵ月間で二次試験や私学の問題に対応する力をつけなければいけないことになります。万全の状態で本番を迎えられない生徒が出て当然です。

・先取り学習を行うことで、学校の授業が理解しやすくなり、学校の授業が先取り学習の復習になる。→「学校の授業が先取り学習の復習になる」というのは良いと思います。しかし、「学校の授業が理解しやすくなる」というのは少々問題です。医学部受験の厳しさを理解していない発言だと思います。塾なしでも学校の授業だけで定期考査で高得点を残す生徒はたくさんいます。それができない、それをしようとしないのであれば、将来の医学部受験が心配です。私も、中学1・2年生や成績の思わしくない生徒に対しては、入念に定期考査対策を行います。しかし、徐々にサポートの量を減らし、最終的には自身の力で学校の授業ぐらいは理解できるようにもっていきます。ほとんどの生徒は、学校の説明で理解しづらかった部分だけを私に質問し、私がその周辺の内容も含めて解説を行うという対応を取っています(どこがわからないのかを自分自身で気づけない生徒もいます。かなり多いです。それに気づけるように育てたうえで学校の授業については質問対応のみに移行します)。

◆デメリット

・先取り学習を行っているが、あまり身についていない。→私のもとに来られる保護者がよくおっしゃることです。先取り学習自体のデメリットではなく、それを行っている塾や予備校の指導の質に問題があるのではと思われる場合もありますが、生徒本人に問題がある場合も少なくありません。先取り学習は、学校よりもはやい進度で学習するため、消化不良になってしまいがちです。私の経験ですが、体験授業などで、他塾で先取り学習を行っている生徒を指導することがありますが、そのほとんどがこの状態です。「知っていることは知っているけど、実際はよくわかっていない」という感じです。もちろん私が用意した問題(それほど難しくない問題)もほとんど解けません。生徒から教えてもらったことですが、塾ですでに高校範囲をすべて習ったにもかかわらず、定期考査で30~40点しか取れない人がクラスに数名いるようです。

・かえって効率が悪い。→私の息子の話ですが、幼稚園の年少のときに教えようとしてなかなか理解できない内容(算数)がありました。しかし、それから半年後に同じ内容を教えると、スムーズに理解できたことがあります。それ以降も何度か同じことがありました。知識や考え方には、理解するのに適正な時期があるのだと思います。もちろん、人それぞれで違います。それを無視してできるだけ早い時期に理解してもらうとすると、かなり多くの時間を費やす必要があります。それならば、その時間を、今理解していることを深めていく方に充てた方が効率がいいかもしれません。ただ、未就学児や小学生と違い、特に高校生は、頭の機能自体は高校1年生も3年生もそれほど変わらないのではないかと私は思っています。

・息切れする。→今の学習に加えて、さらに先取り学習を行うとなると、必然的に学習時間は増えます。中学の頃から頑張りすぎると、高校になって息切れするのではないかと心配される保護者もいるかもしれません。私はそういう生徒とこれまで会ったことはありませんが。

・気乗りしない子が多い。→先取学習を行っても、習った範囲がしばらく定期考査に出ない場合(もちろん模試にも出ない)、目標を見失い、やる気の出ない子が意外と多いです。生徒自身は保護者ほど先取学習を望んでいません。私は先取学習を推奨していますが、生徒によって先取りの度合いを変えています。意識の高い生徒には2~3学年上の内容を教えますが、その場合、2~3学年上の模試を受けてもらうなどしてモチベーションを保てるよう工夫しています。

※「先取り学習の弊害2(私の見解)」へ続きます。