偏差値40台から50台前半の生徒は、実は大きく2つに分かれます。1つはその偏差値どおりの実力しか持っていない生徒。もう1つはその偏差値以上の実力を持っている生徒です。
今回は後者について書きたいと思います。
私の授業では、予習で解けなかった問題はすぐに解説をせずに改めて考えてもらいます。原則ノーヒントで考えてもらいますが、それでも解けない場合は、その生徒の能力や状態に合わせてヒントを出していきます。生徒に解いてもらっている間、私は様子を観察しています。姿勢、目線、目の輝き、生徒が発するオーラなどで、その生徒が正解を導くかどうかがだいたいわかります。解けない生徒ははじめから「自分は解けない」と思って問題に向かい合っていることが少なくありません。もちろんやる気がないわけではありません。無意識のレベルです。こちらが「解く気はあるのか?」と尋ねると、「もちろんあります」と答えるのですが、明らかに解けると思って問題に向き合っているときとは様子が違います。
本題に戻ります。
なぜ偏差値40台から50台前半の生徒の中で、模試で力を出し切れない者がいるのか。キーワードは「萎える」です。試験が始まって問題を見た瞬間、心のどこかで「解けないのではないか」と思ってしまうのです。そこからはそのテストを自分から負け戦にしてしまいます。本来なら粘り強く考えれば正解できる問題も、いい加減に解答欄を埋めたり、とばしたりします。
試験中に萎えた生徒は答案を見ればわかります。普段よりも弱々しく雑な筆跡になっています。解答欄に空白部分があるのではいいのですが、能動的に試験を受けている生徒と比較すると、その空白部分に必然性が感じられません。テスト中、弱気になった自分の気のおもむくままに解答欄を埋めている感じがします。指導者からすると「これは解けたのではないか」「なぜこんな変な解答を書いたのか」などの突っ込み所が満載です。
ではどのようにすればこれが改善できるのでしょうか。
講師が一方的に模試の解説を行って「ほらね、この問題はあなたなら解けたでしょ!」と励ましてもほとんど効果はありません。私自身も以前、そう指導していたことがありました。生徒はその次の模試でも同じことを繰り返します。講師からの説明を聞いて「次は解けるかも」と励まされたぐらいでは、次の模試の「解けないかもしれない」という気持ちを払拭することはできないのです。
私は、この「萎える」をどうしても改善したいとき、思い切って1回の授業を犠牲にします。1回カリキュラムを足踏みしてでも、次の模試のために時間を作ります。私のやることはシンプルです。私の前でもう一度解けなかった問題を解いてもらいます。そのとき私が伝えることは2つだけです。1つは正解かどうかです。不正解の場合はノーヒントでもう一度考えてもらいます。もう1つは解く問題の指定です。その生徒の現時点の力では解けない問題はとばすよう指示します。そして、解けるはずの問題に絞って粘り強く考えてもらいます。生徒が困っているときはヒントを伝えたくなりますがぐっと我慢します。私の顔は終始険しいです。「自分の力で解ける問題はあきらめずに解いてみろ」というメッセージを込めて生徒と対峙しています。そして最後に採点です。数学の問題は1問正解させるだけで10~20点上乗せされることも少なくありません。1問30点の問題もあります。「実力はそれなりにあるのに気持ちが萎えて点数が取れない」タイプの生徒なら、それで本番よりも偏差値で「+10~20」程度は上がります。もちろん、解ける問題とそうでない問題の区別自体が難しいので、そこまでうまくいかない場合もあります。しかし、講師が解き方をすべて教えて「あなたなら解けたはず」と伝えるよりも、はるかに効果的です。偏差値75~80を目指す生徒(※)は満点を取るつもりで試験を受けます。「まずは60~65」を目指す生徒は、満点を狙うとかえって上滑りしてしまいます。自分の解ける問題を確実に正解させて、得点を積み上げる感覚で試験を受けることが望ましいです。
生徒を強く育てることも私の仕事です。テストの受け方の指導においてだけではなく、毎回の授業においても心掛けています。
(※)進研模試は対象外です。この模試で偏差値70を切ると医学部志望者は心配です。