以前にも少し書きましたが、私は先取り学習を否定している訳ではありません。合格する確率を高めるためには、むしろ先取り学習を行った方がいいと考えています。ただし、生徒の性格や能力を見極め、その方法や程度について厳密に策を練ったうえで実行しなければいけないと考えています。もちろん、当初の予定どおり事が進まないこともあります。途中過程での微調整にも注意を払う必要があります。

私が指導した生徒のことを書かせていただきます。

その生徒は中1の5月に入塾してきました。関西有数の難関男子校に通う生徒でした。当初は学校の成績が「中の上」程度だったので、まずは定期考査で結果を出すことを目標に指導を行いました。そこでも少し先取りを行ったのですが、「期末テストの1ヵ月前にテスト範囲の内容をすべて終える」といった程度のものでした。それで上手くいき、2回連続で高得点(ほぼ満点)を取ったので、定期考査対策の比重を徐々に減らしていきました。それでも成績が落ちなかったので、定期考査については1週間前に行う対策授業のみに絞り、残った時間をすべて先取り指導に使うようになりました(もちろん学校の授業でわからなかった問題はその都度質問対応を行っていました)。授業は、「私が基本原理を説明する→私がメイン問題を解説する→生徒が自宅で残りの問題を解く→生徒が次回の授業で解けなかった問題を質問する→復習テスト」という流れで行いました。初めに使用したのが「4ステップ」です。先取りが進んでくると、それと並行して「スタンダード数学演習ⅠAⅡB」を使用しました。進学校では高2~高3で配布されることが多い教材です。それを中2の段階で使用していました。この教材を使用した理由はただ1つです。それは、「4ステップ」によって『知識』は先取りできても、『思考力』は身につかないからです。「4ステップ」を終わらせた後に「スタンダード数学演習ⅠAⅡB」を解き始めるようと考える人もいるかもしれませんが、『思考力』を身につけるという観点で考えると、その間の時間が非常にもったいないです。私は彼に対し毎週4~5題の入試問題を投げかけ、1週間かけてじっくりと思考してもらいました。解けない問題もありましたが、粘り強く考えてもらうことで着実に思考力が身ついていきました。数Ⅲの「4ステップ」に入ると、「チョイス新標準問題集数学Ⅲ」を思考力養成のために使用しました。すべての先取りが終わったのが中3の夏休み前です。そこからはそれまで「4ステップ」に費やしていた授業時間(約30分)もすべて「スタンダード数学演習ⅠAⅡB」と「チョイス新標準問題集数学Ⅲ」に注ぎ込むことができました。中3の秋に力試しにふたつ学年が上の「高2駿台全国模試」を受験したところ、偏差値が70を超えました。それからさらに新しい問題集を2冊解き始め、冬には当時の高3生に交じり、国公立医学部や私立医学部の過去問を解いてもらいました(授業はあくまで「マンツーマン」です)。結局、その高3生たちは国公立医学部や私立医学部に合格していったのですが、過去問の結果は彼の方が優れていました。彼は数学に関しては、中3の段階で医学部に合格できたということになります。

初めは「中の上」だった彼がここまで先取指導によて伸びた一番の原因は、その潜在能力にあると思います。そのときたまたま成績が「中の上」だっただけでもともと持っている能力は高かったのだと思います。しかし、彼ほどではなくても標準的な能力を持っている生徒なら、私のマンツーマン指導によって、先取り指導を味方につけることは可能です。私は、中3~高1で指導を開始する生徒に対しては、「高2の終わりに、滑り止め校で合格最低点を取れるように頑張ろう」と伝えています。これは決して難しいことではありません。本人の頑張りと、私の綿密な指導によって実現できることです。高3になっても余裕を持って、なるべく楽しんで受験勉強をしてほしいと思っています。うまく先取り学習を行えば、それが叶えられるはずです。