暗記数学とは、問題を自力で解くことよりも、解法をインプットすることに重きを置く学習法です。暗記数学では、教員や講師の説明をしっかり復習することが推奨されます。自習で問題集を解く場合においても、5~10分ほど考えて解法が思いつかなければ、その後は解説を見て理解することになっています。それに対して、私が推奨しているのが思考数学です。これは暗記数学とは正反対で、問題を自力で解けるまで考え抜くことを重視しています(もちろん解けない問題を延々と考えさせる訳ではありません)。
私は、暗記数学が有効なのは2つのケースに限るのではないかと考えています。1つは生徒が有能なケース、もう1つは難問が出題されない大学を志望するケースです。理由はそれぞれ異なります。
まず、生徒が有能なケースですが、有能な生徒は、問題の解説を受けるだけで(極端な話)すべてを理解します。例えば、なぜそうなるのか、どういうときにその解法を使用するのか、逆にどういうときにその解法は使えないのか(これは非常に重要です)など、初見の難問に対応できる形で頭の中に解法のエッセンスを保存します。まさに「一を聞いて十を知る」です。このタイプの生徒にとっては、ひとつの問題を長時間あれこれと考えるよりも、できるだけ多くの問題の解法を覚えた方が効率的かもしれません。以前、「学校の宿題は問題集の答えを写すだけ」という生徒を指導したことがありますが、彼はそれで悠々と東大理Ⅰに合格しました。
次に、難問が出題されない大学を志望するケースについてです。数学の問題レベルと大学の偏差値は必ずしも一致しませんが、ある程度の相関関係はあります。偏差値の高くない大学で出題される問題はほとんどがいわゆる「典型問題」です。ひねりもなく、問題を見ればすぐに解き方がわかる問題です(進研模試の問題もほとんどがこのタイプです)。難問も出題されることはありますが、ほぼすべての生徒が不正解となるため、合否には影響しません。ですから、偏差値の高くない大学を志望する場合は、学校で配られた傍用問題集を丸暗記することが効率的と言えるかもしれません。
ここからは少し踏み込んで書きます。この傍用問題集を丸暗記する学習で、どのレベルまで通用するかについてです。生徒の頭の能力や他教科の仕上がり具合にもよりますが、それらが標準的なレベルであると仮定すると、旧帝大レベルよりも偏差値の低い大学の文系学部なら対応できると思います。もちろんその中にはレイブリックの近くにある神戸大学の文系学部も含まれます。数学以外の教科で得意なものが2つくらいある場合なら、例えば神戸大学の工学部でも対応できるかもしれません。他教科がしっかりしていれば(他教科で数学の失点をカバーできるのならば)、暗記数学で乗り切れるケースは意外と多いのかもしれません。
私が担当している生徒はほとんどが医学部志望者です。本当に優秀な生徒は現在のみならず、これまでもほとんどいませんでした。指導開始時に、進研模試では偏差値70を超えていても、駿台全国模試で偏差値65を超えている生徒に出会ったことは数えるほどしかありません。暗記数学で乗り切れるだけの高い能力(「一を聞いて十を知る」)を持っておらず、それでいて医学部を志望しています。医学部受験では、標準問題は正解して当たり前。それに加えて他の受験生と差のつく難問を(すべてではなくても)正解させなければいけません。このようなケースでは、暗記数学で乗り切ることはかなり難しいと思います。
生徒にとって不幸なのは志望大学と学習法のミスマッチです。労力と成果が比例関係にあることが望ましいはずです。これをお読みになった方は、自身の能力と、自身が志望する大学のレベルを考え、どちらの学習が自分にとって必要なのかを判断していただければと思います。