さっそく問題です。

aを定数とするとき、次の方程式を解け。
ax+(a-1)x-a=0

 数学が苦手な生徒は考える前にすぐに手を動かします。焦り、中学入試以来の癖、思い込みの強さ等々、原因は人によって異なります。以下のように式変形をする生徒もいます。

a(ax+x-1)-x=0

「とりあえず」aで括りたかったのでしょう。しかし、ここから動けません。数学が苦手な生徒はここで諦めます。

 私ならこう説明します。

 まず「この式は何ですか?」と尋ねます。「何って言われても…」と生徒は思うかもしれませんが、こういう抽象的な質問を何度も浴び続けると、答えられるようになります。それは、つまり私と同じように数式を見ることができるようになってきたことを意味します。上の数式は二次方程式です。中学2年生辺りで習います。二次方程式の解法の定石はみんな知っています。「まず因数分解を試してみる、それでうまくいかないときは解の公式を用いる」というものです。今回は因数分解できます。

(ax-1)(x+a)=0

 数学が苦手な生徒はなぜこうできなかったのか。それは、文字aを数字と見る意識が弱かったからです(だから前回の記事でその必要性をしつこく書かせていただきました)。数字だと思い込んで数式を見れば、二次方程式であるとすぐにわかります。次の壁です。数学が苦手な生徒は、(ax-1)=0 より、x=1/a とします。aという文字についてのすべての可能性を考えていないのです。a=0のときは分母に0を持ってくることはできません。こういうときは、根本に戻ってaに0を代入するのでしたね。すると、問題文の式は、-(x)=0となります。つまり、x=0です。答えは以下の通りです。

ⅰ)a=0のとき x=0

ⅱ)a≠0のとき x=\( \frac{1}{a}\) 、-a

 別の機会に書きますが、この解説を見て「簡単すぎる」と感じる人には2つのパターンがあると思います。場合分けしてみます。

ⅰ)進研模試で偏差値60以上の生徒のとき その感想は正しいかもしれない。

ⅱ)進研模試で偏差値60未満の生徒のとき その感想を抱くのは危険である。なぜなら、自力で解けることと、人から説明を受けて理解できることとの間には大きな差が存在することがわかっていないから。つまり、現時点では自力で解けないことに無自覚だから。

 こんな感じになると思います。

 高校2年生辺りに習う数Ⅲの「極限」を苦手とする人が非常に多いですが、その原因は中学時代の文字の扱い方にあるのかもしれません。文字についての繊細な感覚を持っていれば、nが大きくなったり、小さくなったりすることについても具体的にイメージでき、スッとこの分野が頭に入りやすくなるはずです。