受講生の予習答案(高2/日本大学・中央大学)

文系志望者です。
192番は数Ⅱの図形と方程式の定石問題ですが、この生徒は「図形的な発想」を用いたとてもユニークな方法で解いています。何としても正解させようと思ってのことなので、現段階ではこれでいいです。学習の初期の段階ではこの気持ちが一番大切です。定石の解法については後で説明しました。
193番(1)もおもしろい発想で解いています。二等辺三角形の性質を利用した「図形的な発想」です。この生徒は、大手中学入試専門塾で最上位クラスにいたそうです。そのポテンシャルの高さがうかがえます。(2)は定石通りの解法です。この問題については逆に私が「図形的な発想」にもとづく解法を紹介しました。分野的には数Aの平面図形と数Ⅱの微分を用いた解法です。
中学入試の後、この生徒は、全国的にも有名な最難関の大学受験塾に入塾しました。中学入試ほど熱心に学習に向き合えなかったのでしょう、次第に授業についていけなくなり、意欲は失われていったそうです。だからといって、授業をさぼったり、まったく予復習をしなかった訳ではありません。間違えた問題はノートに解答を写したり、理解できなかった問題については後日映像授業を観ながら復習したりしていたそうです。私が初めて指導したときの分析は、「数学について何もわかっていない」でした。二次関数の場合分けもできない、定数の文字を扱えない、点と直線の距離の公式も加法定理も覚えていない状態でした。本人的には「それなりに」やってきたつもりでした。しかし、ほとんど何も身についていなかったのです(こういう生徒は非常に多いと思います)。指導当初はかなりきつかったと思います。予習を課してもほとんど解けません。4ステップを用いて基本原理から説明するのですが、その範囲の入試問題を予習させても、ノートには何も書いていない状態でした。すぐに諦めてしまうのです。「そもそもあなたは絶対に解こうとは思っていない、本当の意味で本気にはなっていない」と情熱的に訴えてもほとんど響いていませんでした。私は非常に困りました。これはどうにもならないかもしれない、と指導をストップしそうになったこともあります。ある時期から私は腹をくくり、授業進度を意識することをやめ、これまでよりも「じっくりと」この生徒の指導を行うことに決めました。予習で解けない問題は授業中に考えてもらう。ほとんどヒントを出すことなく、解ききるまで待つ。それで授業が進まなくてもそれはそれで仕方がない。予習で解けた問題はしっかりと復習をしてもらう。一度解いた問題は期間をあけてもう一度解いてもらい、私が必ず添削する。(ちょうど数ⅠAの標準問題をすべて解き終えたタイミングで)授業が進まないことを補うために、高3で解くことになっていた共通テストのⅠAの過去問を毎週解いてもらう、そうすれば高3の中盤から後半にかけて二次試験の対策に時間を多く充てることができる、等々いろいろと取り決め、指導を行いました。結果は予想外に早く出ました。解き始めて1~2ヵ月で共通テストでは良くて90点台、悪くても80点台は取れるようになりました(あくまでもⅠAのみ)。ちょうどその時期に受験した河合塾全統模試においても「ほとんどの問題が解けた」と本人が胸を張って言えるだけの戦いができるようになりました(結果はまだ出ていませんが)。そして、予習の質が格段に上がりました。これまではすぐに諦めていましたが、上記の答案のように、自分なりに解ききろうとする執念を見せてくれるようになってきました。その時点で私はこの生徒に尋ねました。「以前の自分を振り返るに、本気で解ききろうとしていたと思う?」
他人から指摘されても、自身の未熟さをいまいち実感できないことがあります。私の指導している生徒のほとんどがそうかもしれません。この生徒に対してもいくら情熱的に訴えてもうまくいきませんでした。この生徒が自身の未熟さを実感できたのは、この生徒が成長したからだと思います。一段、いや二三段上から、過去の自分を見たときにはじめて、「あー、あのときはひどかったな」「あのままの状態を続けていたらやばかったな」と思えるようになるのだと思います。受験には期限があります。だから私は常に危機感を持っています。担当しているひとり一人の生徒に対して「この生徒を間に合わせることができるのだろうか」と半ば不安を抱え、授業外も指導の改善点を考えています。しかし、焦って早急に結果を求めすぎるとかえって回り道をしてしまう、ということを今回の件で改めて確認しました。忘れないように気を付けたいと思います。
